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アシナガバチの話 [女王の細脚繁盛記]

高尾行きE233:撮影;織田哲也.jpg

毎年この時期、ベランダの下や植え込みの中にアシナガバチが巣を作るのを見るのが楽しみでした。
ハチというと 「刺す虫」 の代表みたいに思われるかもしれませんが、こちらから刺激しない限りそのようなことはありません。
スズメバチは好戦的ですが、アシナガバチなどいたっておとなしいものです。
ただ間違って巣をつついたり、洗濯物にとまっているのを知らず体に触れたりすると、そりゃあ怒って刺しにきます。アナフィラキーショックを起こすこともあるので、アレルギー体質の人は注意したほうがよいでしょう。
それでもふつうはそういう事態は少なく、この時期は女王バチがわき見も振らず、次世代を育てる巣作りに専念しています。

アシナガバチというのは、「ハチと、その巣の絵を描きなさい」 と言われたら多くの人が思い浮かべて描くような、典型的な姿かたちをしています。
間近で観察してみると、じつに勤勉な昆虫であることがわかります。
寒気が直接あたらない場所に身を寄せて越冬した女王バチは、たった1匹で作業します。手伝ってくれる雄バチは、この時期まだいません。
庭木などを齧っては唾液と混ぜ合わせ、傘を広げたような小さい巣をせっせと作ります。
日が落ちると作りかけの巣の上にとまって体を休め、日が昇るとすぐに目覚めて続きに取りかかるのです。
1週間もすれば、直径2センチほどのドーム型をした最初の巣が完成です。下から見上げるとドームの中には、六角形をした小部屋が5~6個できています。
この中に、よく見ると直径1ミリにも満たない小さなタマゴが1つずつ産み付けられています。
女王バチは昨シーズンのうちに交尾を済ませていて、特殊な器官で精液を保存できるような体の構造になっているのです。

タマゴから孵化した幼虫は、女王バチが運んでくるエサを食べてみるみる大きくなります。
巣の小さな房いっぱいの大きさまで成長すると、房の入り口に蓋がされ、中で幼虫は蛹(さなぎ)になります。
数日たってこの蓋が内側から破られるとき、次世代のオスのアシナガバチが中から、次々と太陽の元へと出てきます。
ここまでの一連の作業を、女王バチは独力のみでこなすわけです。
観察しているほうは我がことのように嬉しいやら、愛くるしいやら。「ブラボー!」 と叫びながら冷蔵庫からビールを出し、朝っぱらから祝宴をあげてしまいます。

第一期生のオスが生まれると作業効率はアップします。
同じ作業を繰り返しながら、続けて第二期生、第三期生が誕生すると一族の数は増え、巣はどんどん大きくなります。
夏になるころには、手の平サイズにまで成長している巣もあります。
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/1891/asinagabachi/asinagabachi2.html
(参考:『我が家の庭はビオトープ』 ありがとうございます。ちなみにこのサイトではセグロアシナガバチを観察されていますが、私の家に来ていたのはフタモンアシナガバチとキイロアシナガバチでした)

ところがここ5年ほど、アシナガバチは一匹も我が家から旅立っていってくれません。
理由ははっきりしています。5年前に作られていた巣が、あのいまいましいヒメスズメバチに襲撃されたからです。
ある朝、観察に出た私の目に飛び込んできたのは、無残にもボロボロにされた巣の外形と、空洞になった房と、足元に落ちている幼虫たちの喰いちぎられた体でした。
女王バチの姿はどこにも見当たりません。
ヒメスズメバチはアシナガバチの天敵で、アシナガバチの幼虫の肉を自分たちの子供のエサに供する生態をしているのです。
それでも次の年、アシナガバチはまた巣作りをしてくれたのですが、そのときも同じようにヒメスズメバチの餌食となってしまいました。それ以来、愛するアシナガバチは近づいてきてくれません。

蜂の巣に 貸しておいたる 柱かな
蜂の巣のぶらり 仁王の手首かな (いずれも小林一茶)

今は、たまにどこかの家に巣くっているアシナガバチがやってきて、ウチの庭で巣の材料集めをしています。
スズメバチの攻撃にさらされないことを祈るのみです。

蜂の子の 母を待ちゐる 小部屋かな

http://www.youtube.com/watch?v=IvC9sbK725M
PM2.5にあらず。PPM。
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