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女王の細脚繁盛記 ブログトップ

summer without a vacation [女王の細脚繁盛記]

季節の終わりへ:撮影;織田哲也.jpg

今年は夏休みがなかったなあ…
いや、「今年は」なんて言っていますが、実は何年にもわたって、毎年思っていることです。
休みらしい休みもないまま、とうとう8月の終わりを迎えてしまいました。
まだまだ残暑は続きそうですが、気持ちの上では、寂しいような哀しいような。

小学生の頃、夏休みに入るすぐに林間学校の行事がありました。
それが終わると、長くけだるく暇な時間が、青空にぽっかりと浮かんだ雲のようにゆっくりと流れていきました。

アシナガバチたちは、今が増殖のピークです。
おそらく、女王・カトリーぬⅠ世はすでに死んでいます。働きバチだけが、女王の遺し子を育てている時期です。
急にハチが増えたように感じるのは、実際に個体数が増えたこととあいまって、餌を探したり巣の材料を集めてくるための労働が減ったことも関係します。
上の写真は昼間に撮影したものですが、朝夕は壁にも20匹以上のハチが張りついています。

このコロニーの役割は、そろそろ収束の方向に向かっています。
新世代の女王バチもたくさん誕生し、オスバチとの交尾も進んでいると思われます。
交尾したからといって、今シーズンに卵を産んで育てるということはしません。
このあたりは昆虫の脅威なのですが、ハチの体内ではオスの精子が来シーズンまで生き続けるというのです。
越冬した女王バチは来年の5月ごろから巣作りを始め、そこではじめて受精卵を巣に植え付けるという手筈です。

だから上の写真に写っている多くのハチたちは、すべてカトリーぬⅠ世の子供たちなのです。
新世代の女王バチになれなかった働きバチたちは、今年のうちに死んでしまいます。実際、数匹の死体が地面に落ちている姿をちらほら見かけるようにもなってきました。

ゆく夏の後ろ姿を追うように、最後まで彼らの営みを見届けたいと思います。

http://www.youtube.com/watch?v=BB81_DTZYns

コロニー “the colony” [女王の細脚繁盛記]

the colony:撮影;織田哲也.jpg

2か月近くブログを更新していない間に、画期的な発展を遂げたのが画像の彼らです。
6月17日の画像と比較してみてください。当時は巣の直径がテニスボールくらいでしたが、大きめのソフトボールを超え、ハンドボール大に迫りつつあります。
ファミリーの構成員も前回は5匹程度でしたが、今や30~40匹のコロニーに成長しました。
体の大きい個体も数匹いて、どれが女王・カトリーぬⅠ世か、容易には判別がつかなくなっています。
巣に風を送る羽音も一段と大きくなり、撮影のため数十センチにまで近づくと、彼らの性格はわかっているにしてもやはり少し恐ろしくなります。
デッキで見上げて観察していると、頭やシャツにたかられることもしばしばで、平和的共存のためには、いちいちそれに驚いて手で払ったりしないよう注意しなければなりません。
幼虫や蛹(さなぎ)もどんどん生まれてきています。この先どこまで発展するのかとても楽しみです。

若い方はご存じないでしょうが、私が小学生の頃(1960年代前半)には2B弾(にービーだん)という、火薬を使った一種の爆竹が駄菓子屋などで売られていました。
タバコより少し細めの筒の中に火薬が詰められていて、3センチほどの導火線が延びています。これに点火して数秒すると、最初煙が出て、その後かなり大きな破裂音とともに爆発する仕組みです。
この玩具は危険度も高く、子供がポケットに入れたままにしていたら発火して火傷を負ったり、稲わらなどに引火して火災が発生するなどしたので、のちに販売禁止となりました。

この2B弾には、生涯忘れられない思い出があります。
友達と一緒にカエルの口にこれを突っ込んだうえ、導火線に着火。理不尽な被害者となったカエルは、内臓をあたりに飛び散らかして骸(むくろ)と化しました。
今ここに書いているだけでも、身の毛のよだつ経験です。
主導した友達は何度もこの残酷な遊びを実行していたそうですが、なぜそんな遊びに自分も参加してしまったのか、どうして「やめようよ」と一言言えなかったのか、カエルが吹き飛んだ瞬間から現在に至るまで、後悔の念はずっと継続しています。
食に供するというのなら話は別です。また対象が害虫や害獣なら退治するのも仕方のないことでしょう。研究などのために動物を犠牲にすることにも、納得はいきます。
けれども、小さい生命を弄(もてあそ)び、まして虐待願望を満足させるためにその尊厳を奪うことはあってはならないと、小学校低学年のときのあの遊びが私に教えてくれました。
口の中に血の味が漂うような苦い思いは、半世紀たった今でも変わりません。

アシナガバチのコロニーを観察しながら、そんなことをふと思い出します。
お盆です。明日は寺院に出向いて、水施餓鬼廻向法要に立ち会ってきます。
ご先祖の霊はもとよりとして、殊更(ことさら)に殺し誤って殺してきたいくつもの命にもまた、廻向の祈りを捧げてきたいと思っています。

http://www.youtube.com/watch?v=DpWzL54n1Ds
山好きですから


ザ・ファミリー [女王の細脚繁盛記]

the family:撮影;織田哲也.JPG

4日前に撮影したものです。
あっという間に、女王・カトリーぬⅠ世の家族は、こんなに増えていました。
5年ぶりに襲われることなく、次世代が我が家から誕生したのです。
Bravo!

敵が全くいないわけではないようで、先日もすぐ近所の公園で、中型のスズメバチがホバリングしているところを目撃しました。
この時期のスズメバチは、人間にはあまり恐怖の対象ではありません。
我がとこの巣作りや子育てに忙しくて人間などに構っている暇はないからですが、その分、アシナガには脅威が増すというわけです。
これはファミリーが増えたからといって、安心できる話ではありません。
アシナガの成虫がいくらいようと、1匹のスズメバチにはとても適わない。
大勢で敵を取り囲み、サウナ攻撃を仕掛けて相手を撃退するといった忍法が使えるのは、ニホンミツバチだけなのです。

ここのところ雨が降り続き、一方で気温は高かったため、アシナガの成虫は巣の上で翅を打ち振っては、巣に風を送っていました。
こういうところの知恵は、見ていて感動的です。
最近TVで、日本野球機構の醜悪な老人や、復興庁の暴言ツイッター男の泥顔など厭でも拝ませられたので、よけいに心が洗われる思いがします。
撮影した写真を見ると、さらに次の世代の幼虫が育ちつつあるようで、どこまで大きな巣になっていくか楽しみです。

http://www.youtube.com/watch?v=LiziwxZBIH0
― 僕らは地球に生まれ、太陽はまぶしく、目に映るもの手に触れるもの、求め旅は続く…

蛹化(ようか) [女王の細脚繁盛記]

蛹化:撮影;織田哲也.jpg

巣の真ん中のほうの子供たちが、蛹(さなぎ)になるようです。
室に天井ができて蓋をされたようになっていますが、あれは女王カトリーぬⅠ世の手によるものではなく、幼虫自身が口から繊維を吐きだして造成したものです。
生まれて間もないのに、もうそんな大事な仕事をやり遂げたというわけです。
今回の撮影は30cmほどの距離で行いましたが、女王はすでにこちらに馴れたか、見向きもしません。
幼虫の群れだけが、モゾモゾと蠢(うごめ)いていました。

5年ほど前に、2年続けてヒメスズメバチの襲撃を受け全滅したときは、1匹とて蛹になることさえできませんでした。
最後の試練を越え、あの蓋を内側から破ってこの世に出てきたら、立派なキアシナガバチの成虫です。
働き手が増えると、巣もまたどんどん大きくなっていきます。
カメラを構えながら、自分の鼓動がはっきりと聞こえました。

http://www.youtube.com/watch?v=OvOUhdtEF3Y

蜂の子 [女王の細脚繁盛記]

P1060048 (2).jpg

卵がかえり、幼虫がすくすくと育っています。
お母さん蜂にとっては、今が一番忙しい時期です。
たった一人で、これらの子供たちを育てているわけですから。
けれどもそこは自然界の慣わし、よくしたもので、
幼虫がお母さんから口うつしで餌をもらうとき、
お母さんにとってエネルギー源になる養分を唾液に混ぜてお返ししているということです。
健気に生きています。何も言うことはありません。

http://www.youtube.com/watch?v=uBYlnReBDDg
「生きている鳥たちが生きて飛びまわる空を…」

約20日後 [女王の細脚繁盛記]

約20日後:撮影;織田哲也.jpg

アシナガの巣作りを発見してから20日以上たちました。巣はこんなに立派になっています。
4月15日の画像と比較すると、女王様のご努力に感服至極でございます。
今回は撮影のために脚立を用意して30センチほどに近づいてみました。最初は少し意識してるようでしたが、攻撃してくる気配はありません。
顎(あご)をせわしく動かし、庭の草木から採取した植物繊維と唾液とを混ぜて巣の材料としている様子が、よく観察できました。

日本文学史上最古の長編物語である 『うつほ物語』 には、子宝に恵まれることを、「蜂巣のごとく産み広ぐめり」 と形容した記述があります。
巣の中のすべての房に卵が産み付けられ、それらが孵(かえ)って幼虫となります。
この幼虫の時期にヒメスズメバチの攻撃を受けなければ、蛹(さなぎ)から成虫へと成長を続けることができるのです。
ヒメスズメバチはアシナガバチの幼虫を噛み千切り、肉団子にして自分の子の餌にします。
自然の営みですから仕方ありませんが、幼虫の体の断片が足下に散らばっている悲しい光景は、二度と見たくないものです。

美しく 括(くび)れてをりし 蜂の腰 (大堀柊花)

母蜂の 庭を巡るる 羽音聴く

http://www.youtube.com/watch?v=thCePPbpdXI

新たな「家族」 [女王の細脚繁盛記]

巣:撮影;織田哲也.jpg

昨日のブログに、アシナガバチの幼虫がヒメスズメバチに襲われて以来、巣を作りに来てくれないという話をかきました。
今朝、庭に出ていると、2階のベランダの下に向かってアシナガが1匹飛来したのに出くわし、もしやと思って見てみると、ほんの小さな巣作りが始まっていました。
おお、じつに3年ぶりです。
上の画像で、ネジの横にラッパ様のものがぶら下がっていますが、これこそ巣全体を吊り下げるいわば大黒柱の部分なのです。
下は、新しい家族のとれたての画像です。巣の形状や色を見てみなければ特定できませんが、セグロアシナガかキアシナガのどちらかでしょう。

女王様:撮影;織田哲也.jpg

不安定な姿勢で片手撮りしたので手ブレ気味ですが、せっせと働く女王様の姿を見てあげてください。
今はまだ相手も緊張しているでしょうから、もう少したってこちらに馴れて来たら、間近に寄って撮影したいと思います。
これから秋まで、この女王の生命が尽きるまで、不幸な出来事が起こらないよう、思わず合掌してみたのです。
とにかく、ようこそ。おかえりなさい。

http://www.youtube.com/watch?v=7XHabLWa40U

アシナガバチの話 [女王の細脚繁盛記]

高尾行きE233:撮影;織田哲也.jpg

毎年この時期、ベランダの下や植え込みの中にアシナガバチが巣を作るのを見るのが楽しみでした。
ハチというと 「刺す虫」 の代表みたいに思われるかもしれませんが、こちらから刺激しない限りそのようなことはありません。
スズメバチは好戦的ですが、アシナガバチなどいたっておとなしいものです。
ただ間違って巣をつついたり、洗濯物にとまっているのを知らず体に触れたりすると、そりゃあ怒って刺しにきます。アナフィラキーショックを起こすこともあるので、アレルギー体質の人は注意したほうがよいでしょう。
それでもふつうはそういう事態は少なく、この時期は女王バチがわき見も振らず、次世代を育てる巣作りに専念しています。

アシナガバチというのは、「ハチと、その巣の絵を描きなさい」 と言われたら多くの人が思い浮かべて描くような、典型的な姿かたちをしています。
間近で観察してみると、じつに勤勉な昆虫であることがわかります。
寒気が直接あたらない場所に身を寄せて越冬した女王バチは、たった1匹で作業します。手伝ってくれる雄バチは、この時期まだいません。
庭木などを齧っては唾液と混ぜ合わせ、傘を広げたような小さい巣をせっせと作ります。
日が落ちると作りかけの巣の上にとまって体を休め、日が昇るとすぐに目覚めて続きに取りかかるのです。
1週間もすれば、直径2センチほどのドーム型をした最初の巣が完成です。下から見上げるとドームの中には、六角形をした小部屋が5~6個できています。
この中に、よく見ると直径1ミリにも満たない小さなタマゴが1つずつ産み付けられています。
女王バチは昨シーズンのうちに交尾を済ませていて、特殊な器官で精液を保存できるような体の構造になっているのです。

タマゴから孵化した幼虫は、女王バチが運んでくるエサを食べてみるみる大きくなります。
巣の小さな房いっぱいの大きさまで成長すると、房の入り口に蓋がされ、中で幼虫は蛹(さなぎ)になります。
数日たってこの蓋が内側から破られるとき、次世代のオスのアシナガバチが中から、次々と太陽の元へと出てきます。
ここまでの一連の作業を、女王バチは独力のみでこなすわけです。
観察しているほうは我がことのように嬉しいやら、愛くるしいやら。「ブラボー!」 と叫びながら冷蔵庫からビールを出し、朝っぱらから祝宴をあげてしまいます。

第一期生のオスが生まれると作業効率はアップします。
同じ作業を繰り返しながら、続けて第二期生、第三期生が誕生すると一族の数は増え、巣はどんどん大きくなります。
夏になるころには、手の平サイズにまで成長している巣もあります。
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/1891/asinagabachi/asinagabachi2.html
(参考:『我が家の庭はビオトープ』 ありがとうございます。ちなみにこのサイトではセグロアシナガバチを観察されていますが、私の家に来ていたのはフタモンアシナガバチとキイロアシナガバチでした)

ところがここ5年ほど、アシナガバチは一匹も我が家から旅立っていってくれません。
理由ははっきりしています。5年前に作られていた巣が、あのいまいましいヒメスズメバチに襲撃されたからです。
ある朝、観察に出た私の目に飛び込んできたのは、無残にもボロボロにされた巣の外形と、空洞になった房と、足元に落ちている幼虫たちの喰いちぎられた体でした。
女王バチの姿はどこにも見当たりません。
ヒメスズメバチはアシナガバチの天敵で、アシナガバチの幼虫の肉を自分たちの子供のエサに供する生態をしているのです。
それでも次の年、アシナガバチはまた巣作りをしてくれたのですが、そのときも同じようにヒメスズメバチの餌食となってしまいました。それ以来、愛するアシナガバチは近づいてきてくれません。

蜂の巣に 貸しておいたる 柱かな
蜂の巣のぶらり 仁王の手首かな (いずれも小林一茶)

今は、たまにどこかの家に巣くっているアシナガバチがやってきて、ウチの庭で巣の材料集めをしています。
スズメバチの攻撃にさらされないことを祈るのみです。

蜂の子の 母を待ちゐる 小部屋かな

http://www.youtube.com/watch?v=IvC9sbK725M
PM2.5にあらず。PPM。
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