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六月の季語から [日々雑感]

大宮行快速『むさしの号』:撮影;織田哲也.jpg

6月は別名 『水無月』。
雨が降るのに水無月とはどういうことか? 「それはな、旧暦の6月は新暦の7月に相当するからやで」 と、国語のウエノ先生は仰ったのです。
6月も5月に引き続き、旧暦と新暦の狭間にあって、さまさまな季語が飛び交います。
「常夏月」 などと呼ばれる一方で、「入梅」 とあるなどその典型です。

梅雨(つゆ)にもいろいろありまして、「走り梅雨」 は梅雨本番に先立って雨がぐずぐず降り続く状態をいいます。
「空(から)梅雨」 は、梅雨の間にほとんど雨が降らない状態を指していい、夏に向けて水不足が心配されます。
「青梅雨」 というのもあって、新緑の葉に降り注ぐ雨を美しく表現した季語です。

睡蓮の池 まづ梅雨に 入りにけり (久保田万太郎)
落書の 顔の大きく 梅雨の塀 (河東碧梧桐)

「夏至」 ともなれば衣替えの時期。
「夏衣(なつころも)」 「単衣(ひとえ)」 あるいは 「網戸」 といった言葉から、高温多湿の季節を迎える暮らし向きがうかがわれます。
「早苗」 「代掻き」 「田植え」 などは農事暦そのものです。
「川狩」 「夜釣」 「夜焚(よたき)」 「夜振(よぶり)」 は漁法にまつわる季語。
「夜焚」 「夜振」 はともに松明(たいまつ)やカンテラなどの光で魚を集めるのですが、「夜焚」 はおもに海魚、「夜振」 はおもに川魚の漁法です。

しなのぢや 山の上にも 田植笠 (小林一茶)
雨後の月 誰ぞや夜ぶりの 脛(はぎ)白き (与謝蕪村)

田植えの時期ともなれば、脇にはカエルの姿がつきもの。
「青蛙」 「雨蛙」 「蝦蟇(がま)」「蟇(ひきがえる)」 みんなこの月の季語におさまっています。
また、鳥が季語になっているのも、6月の特徴です。
「岩燕」 「夏燕」 「仏法僧」 「筒鳥」 「駒鳥」 「鵜(う)」 「夜鷹」 「夏鴨」 「時鳥(ほととぎす)」 と、少し探しただけでこれだけ見つかりました。
「閑古鳥」 もあります。「梅雨の長雨で、劇場や映画館はどこも客足が悪いのか…」 と勘繰るのは間違い。「閑古鳥」 はカッコウのこと。
どの鳥も、巣から新しい生命が羽ばたいていく時期なのです。

雨蛙 不思議に酒の 飲める夜や (大野林火)
淋しさは 闇人にこそ かんこどり (加賀千代女)

「花菖蒲」 「あやめ」 「くちなし」 「鈴蘭」 「紫陽花(あじさい)」 といった花も、梅雨を彩る主役です。

菖蒲剪(き)るや 遠く浮きたる 葉一つ (高浜虚子)
思ひ出して 又紫陽花の 染めかふる (正岡子規)

「五月雨(さみだれ)」 が梅雨の長雨、「五月晴れ」 が長雨の合間の晴れ間を指すということは、以前にも書きました。
「五月闇(さつきやみ)」 は、五月雨の降る頃の夜が暗いことを表します。
都会の明るい夜はそんな言葉などどこ吹く風かと思いきや、節電のために街灯を落とした公園などを歩いていると、その闇にふと心が惹きつけられたりします。
ここ数日、東京では深夜に少しまとまった雨が降りました。
夏の明るさの中に飛び込んでいく前に、暗さを楽しめる季節になるよう、自ら機会を求めていきたいものです。

五月雨や 桶の輪きるる 夜の声 (松尾芭蕉)
夏の川 汽車の車輪の 下に鳴る (山口誓子)


紫陽花の色 日替わるや 朝の雨
歩を止めて ただ雨音の 五月闇


http://www.youtube.com/watch?v=Kt8aFHZdGG4

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