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五月の季語から [日々雑感]

下り「スーパーあずさ」上野原通過:撮影;織田哲也.jpg

五月はいったい、春なのか夏なのか。
旧暦で言えば夏に分類されますが、新暦では春に組します。
旧暦と新暦のイメージの差が最も出やすい月、と言えるでしょう。

五月五日は 「端午の節句」。
「端午」 は五節句のひとつで、わが国では 「こどもの日」 に指定されています。
「ちまき」 を食べたり 「菖蒲湯」 をつかうことなどは古代中国由来の習慣で、わが国では 「菖蒲」 が 「尚武」 に通じることから、武家を中心に男子の健やかな成長を祈願する日とされてきました。
「鯉幟(こいのぼり)」 は江戸中期以降に広まった、わが国独自の風習。「鯉の滝登り」 が立身出世の象徴として捉えられたことによります。
「武者人形」 や 「鎧・兜」 を飾るのも、やはり武家の影響が大きいようです。

浦の船 端午の菖蒲 載せて漕ぐ (水原秋桜子)
青葉がちに 見ゆる小村の 幟(のぼり)かな (夏目漱石)

五月には全国で大きな 「祭り」 が催されます。
ざっと考えただけでも、東京では 「神田祭(神田明神)」、「三社祭(浅草神社)」、京都では 「葵祭(賀茂神社)」、福岡では 「博多どんたく」 などがあげられます。
また毎年のことではありませんが、「御柱祭(諏訪大社)」 の 「里曳き」 が行われるのも五月です。
国宝・阿修羅像で有名な奈良の興福寺では 「薪能」 が催されます。

月残す 浅草の空 まつり笛 (杉本寛)
月出づる 橋弁慶や 薪能 (正岡子規)

「新」 のつく五月の季語もいくつかあります。「新緑」 「新茶」 「新樹」 などはその代表です。
「初」 では、何と言っても 「初鰹(はつがつお)」 でしょう。

目には青葉 山ほととぎす 初鰹 (山口素堂)

この有名な句以外に、「女房を質に入れても初鰹」 などというけしからん川柳もあるくらい、江戸の庶民は春から夏に向かう季節の旬を楽しんでいました。
「蛸」 「烏賊(いか)」 「鯖」 「飛魚」 「鮑」 「紅鱒」 といった海・川のものに加え、「筍」 「蕗(ふき)」 「蚕豆」 「豆飯」 など山や野のものも、この月の季語に名を連ねています。

蛸壺や はかなき夢を 夏の月 (松尾芭蕉)
好き嫌ひなくて 豆飯豆腐汁 (高浜虚子)

「夏めく」 「夏きざす」 「薄暑」 「夏霞」 といった、「夏」 を含んだ季語も、初夏の薫りを運んできます。
「麦秋」 「麦の秋」 は古文の授業でも習った言葉。そういえば小津安二郎が原節子を起用して撮った 『麦秋』 という映画もありました。

芛(たかんな)の 皮の流るる 薄暑かな (芥川龍之介)
麦秋の 人々の中に 日落つる (吉岡禅寺洞)

そうそう、忘れてはならないのが 「母の日」 です。
ところが母の日を題材にした句は、意外にも哀しいものが多くなっています。

母の日や 塩壺に「しほ」と 亡母(はは)の文字 (川本けいし)
母の日の 主婦の結核 みな重く (山本蒼洋)

その理由もわかるので、心が少し痛んだりしています。
大阪で独り暮らしをしている母親に、電話のひとつもかけてやらないといけません。


青葉並木 少年の日の 香(か)に萌ゆる
母の日や 小さく咲ける 霞草(かすみそう)

http://www.youtube.com/watch?v=GVZAK-9oIwI



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