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廃語の風景㉔ ― デラックス [廃語の風景]

上りE233西八王子駅:撮影;織田哲也.jpg

「デラックス」 はもちろん deluxe という英語の単語です。
もとはフランス語で de luxe と綴られ、英語でいうと of luxury に相当します。
最近の若い人は、この 「デラックス」 の意味をあまり知らないようです。
なんでも 「デブ」 とか 「オカマ」 とかいう意味で捉えていることが多いと聞きましたが、それは多分、「上からマリコ、横からマツコ」 のあの人のインパクトがあまりに大きいせいだと思われます。
本来の意味は 「豪華な、ぜいたくな」 で、a deluxe train(特等車) とか a coupe deluxe(デラックスクーペ) のように、名詞の前にも後ろにも置くことができます。

私が子供の頃、いや高校生の時分まで、「デラックス」 は、日常生活の中で頻繁に見かける単語だったように思います。
もう、どんな商品名につけても 「ワンランク上」 という意味を表すことのできる、万能選手でした。
記憶を辿れば、日産ブルーバードの下のクラスが 「スタンダード」 で、上のクラスが 「デラックス」 だと、親父が集めていたカタログに載っていました。
中2のときに買ったテニスのラケットは、今はなきフタバヤの 「ミリオンストローク」 でしたが、そのシャフトの部分にも DE LUXE MODEL と書かれていました。
明治製菓から販売されている、あのこげ茶色のパッケージ 「明治ミルクチョコレート」 は、なんと大正15年生まれのブランドですが、「明治ミルクチョコレート・デラックス」 もかつては全国のお菓子屋さんでベストセラーを誇っていました。
黄色の地に金色の縦ストライプが入ったパッケージは、こげ茶色のに比べていかにも豪華に見え、高級品の品格を遺憾なく誇っていたものです。
ホテルや旅館も 「デラックス」 なら、鉛筆や消しゴム、洗剤、トイレットペーパーといった日用品に至るまで、「デラックス」 のオンパレード状態でした。
これはもう、「アブラカタブラ」 や 「エコエコアザラク」 に匹敵する、最強の呪文といって過言ではありません。

「デラックス」 と同じように、単語の前後につけて 「ランクが上」 といった意味を表す語に、「super(スーパー)」 があります。
man の前につければ Superman(スーパーマン) になり、文字通り 「超人」 の意味を表します。
さらに super 以上の意味を持たせるため、ultra を冠した Ultraman(ウルトラマン) は 「超・超人」 というほどの意味でしょう。
super や ultra は、現在でもあらゆる商品に適用されています。
私は髭を剃るために今まで何種類かのシェーバーを使ってきましたが、「スーパーなんとか」 もあれば 「ウルトラなんとか」 もありました。
new(新~) というのも定番で、new とか neo とかを商品名の前後につけただけで、
「あ、これは新しい機能を伴った商品なんだ」
という、美しき誤解を消費者に容易に与えることができます。
英語の教科書にさえ、NEW HORIZON や NEW CROWN があります。かつては NEW PRINCE READERS や NEW APPROACH TO ENGLISH といった教科書もありました。
英語教育に関わる仕事は多いのですが、いまだにどこが new なのかよくわかっていません。

cyber(サイバー) とか global(世界的な) を冠した商品もあります。実際にそれほどの意味のある商品かどうかはあまり関係なく、要はイメージ的に 「他と違う」 ことが伝わればいいという戦略です。
それも分からなくはありませんが、だったらどうして、今日び 「デラックス」 だけがぽつんと忘れられた存在になっているのでしょう。
頭出しの 「デラ」 が、発音上あまりにもベタな印象だからでしょうか。

「デラックス」 の復権がいつ来るのか、ひそかに楽しみにしている私です。
それにしても今、「明治ミルクチョコレート・デラックス」 は普通の菓子屋やスーパーにはなくて、百均ショップや通販で販売されています。
これって、いったいどういうことでしょうか。謎はますます深まります。

http://www.youtube.com/watch?v=S301GWoi60s
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