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禍福(かふく)妄言録 [日々雑感]

115とE351:撮影;織田哲也.jpg

中学生の頃、日曜日の朝といえば 『兼高かおる世界の旅』 でした。
ツーリストライター・兼高かおるさんが、世界のあちこちを旅してまわる紀行番組で、今ではよくある旅番組のご先祖みたいなものです。
調べてみるとこれは、1959年から1990年にかけて TBS 系列で放映され、じつに30年にもおよぶ長寿番組だったことがわかりました。
兼高さんは私の母親と同年齢で、世界150カ国以上を訪れた経験があるそうです。
私が番組を見ていたころ彼女は40歳前後のようですが、80歳をゆうに越えた現在も取材に飛び回っておられるとか。いやはやタフなおばあちゃんです。

中学生の私は 「こんなふうに世界各国を旅しながら過ごせる人生って、なんと幸福なのだろう」 と憧れる一方、「どうやって旅行費用を捻出しているのだろう、旅行ばっかりしていたら仕事でお金を稼ぐ時間がないじゃないか」 と、よけいな心配をしていました。
今でこそスポンサーの存在やら、スポンサーを説得するための企画のプレゼン、などという大人の事情を理解していますが、純朴だった当時はそんなところにアタマの回る余裕などなかったのです。
『少年ジャンプ』 に連載されていた 『すごいよマサルさん』 というマンガの中で、ヘンな主人公マサルの将来の夢が 「旅人」 だと知り、あ、作者のうすた京介も 『兼高かおる世界の旅』 に憧れたはずだ、と一人で納得したものです。

大学生の頃、ふと目にした少女マンガに中世の吟遊詩人が登場し、貴族の奥方と大恋愛に陥るシーンがありました。
吟遊詩人は10世紀から15世紀のヨーロッパに現れ、自分で詩や曲を作り、各地を放浪しながら歌い歩いていた人。言ってみれば一種のシンガー・ソングライターです。
身分の低い者もいましたが、王侯貴族の一部の変わり者が他の貴族や騎士の宮殿を訪ねてまわるケースも結構ありました。
詩曲の内容は、神話や各地の紀行・伝説、英雄たちの武勇伝などさまざまです。
とりわけ身分の高い奥様方にウケたのは恋物語や女性への賛美だったそうで、そのあたりから、ついついイケナイ関係に発展したりしたのでしょう。
旦那が戦に出かけている間に、お気に入りの吟遊詩人を寝室に引き入れて一夜を過ごしたところ、翌朝ふいに旦那が帰ってきてそれを発見し決闘になってしまった、などといった話も稀ではなかったようです。
なにやら最近の芸能ニュースみたいで、人類の進歩もあやふやなものだとわかります。

中世の吟遊詩人にとって、いかに宮殿内でスポンサーを見つけるかが命綱でした。
そのため貴族や騎士の奥様方のご機嫌をとり、心にもない讃辞を贈り、欲望を満たすお手伝いをしなければなりませんでした。
シンガー・ソングライター以外に、ホスト的才能もなければ、務まらなかったわけです。
「王侯貴族や騎士の間では、ホモ、レズ、サド、マゾ、夫婦交換、乱交、フェチ、スカトロ、幼児愛好など、あらゆる変態行為が流行していたんだぞ」 大学時代の先輩が教えてくれました。
「変態性癖を持った奥方のお相手をさせられたのが吟遊詩人や音楽家、芸人たち。見た目は優雅でも、スポンサーの要求に辟易したこともままあったんじゃないかな」
さすがにこういうことまでは、少女マンガのネタにはできなかったでしょう。
ちなみにこの先輩は、中世ヨーロッパの男色文化に興味を持って研究していた人でした。

自分は兼高かおるさんになれなかったのは残念ですが、吟遊詩人になれなかったことは本当によかった。
「禍福は糾(あざな)える縄の如し」 というのは、まさにこういうことを言うのですね。
(違うわっ!)

http://www.youtube.com/watch?v=EA46jZD6ZM0

「禍福は糾える縄の如し」 : 「禍福」 とは災いと幸福、「糾う」 はより合わせること。人間の幸不幸はより合わせた一本の縄のように表裏をなしていて、予測できないものだ。不幸だと思ったことが幸福に転じたり、幸福だと思っていたことが不幸に転じたりすることのたとえ。
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